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ニュージーランドでの日々を書いています。

初めてのワーホリでロックダウンにノックダウンされる話

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2月下旬に仕事を辞めた私は、その後少しだけ旅行をして、帰ってきたら就活をして職を手にし、完全英語環境の職場を手に入れる、はずだった。

学生ビザ持ちの恋人は学校の後に仕事をしており、私の次の仕事によっては会う時間の調整が難しくなるかもしれないのでもう一緒に住んでしまおうかという話になり、猫ちゃんズと涙のお別れをしてから(猫側は別に泣いていなかったが)私は恋人と共にシティ中心部のフラットに引っ越した。

既にこの頃コロナウイルスが国外で取り沙汰され始めてはいたものの、まだそこまで大事になると思っていなかった私は呑気にも、ワイナリーで有名なワイヘキ島への日帰り旅行や、温泉地として有名なロトルアでの旅行を楽しんでいた。なんだかんだずっと語学学校や仕事があったので、ニュージーランドにワーホリに来てからはこれが初めての旅行であった。

 

ハワイのような爽やかな風が吹く快適なワイヘキ島も、

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ディズニー映画のような美しい景色溢れるロトルアも、とても素敵な場所だった。

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よって、旅行に行ったことは後悔していない。


後悔していない、が。


旅行から帰ってきて2週間ほど就活し、いくつかトライアルで来てみますか的な話ももらい、順調に決まりそうだなあ良かった良かった、と思っていたあたりでNZ政府が突然、3日後からのロックダウンを発表した。

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いやロックダウンってなに?ていうか3日後て。
軽くパニックになりながら、スーパーに列を作る人々を写すテレビをただ眺めていた。
ぜんぜん「良かった良かった」ではなかったのである。
そしてこれは私の人生あるあるパターンの1つなのである。

NZ政府は
・ロックダウン後もスーパーは時間短縮して毎日営業すること、
・品物の確保は十分にあること、
・働けない間は政府から職場に補助金が降りること、
・今の所ロックダウンは一ヶ月を予定していること
をアナウンスしていた。
人々も困惑しつつも等間隔に列に並んでスーパーに入るのを待っていて、発表直後も大きな混乱は(私の感覚では)なかったように思う。

ひとまずスーパーに並び、鶏肉等の生ものだけ少し買ったあと(というか既に少ししか品物がなかった)、我々はゲームショップへ向かった。
一ヶ月ゲームで遊び倒すためである。
するとなんと、ゲームショップも長蛇の列だった。
みんな考えること一緒か。
おそらくシティ中のゲーマーの思考が一致した瞬間であった。


そして3日後、ロックダウンが始まった。
こんな急に出されても皆対応できないのでは?と思っていたが、まあまあ高層の部屋から見下ろした街には完全に人気が消えていた。
エッセンシャルワーカーの一種である運送関連の仕事をしていた恋人はロックダウン中も電車を乗り継いで仕事に行っていたのだが、街中も電車内もほとんど人がいなかったそうだ。

スーパーの行列は2週間程度でほぼ目立たなくなった。
ロックダウン当初は多少混乱があったものの、スーパーのスタッフたちの圧倒的な頑張りにより品物が宣言通りちゃんと補充されていくのを見て、皆パニックからはわりとすぐ目覚めたようだった。
人との距離をとっての適度な運動のための外出は許可されていたので、同じ家に住んでいる人と散歩に出かける人がちらほら増え、街では散歩する子供連れにむけて家の窓辺にテディベアを飾って道行く人を楽しませる企画が流行り、アラサー児であるところの私も窓辺のテディベアを数えて楽しんだ。

日本の記事でも多々取り上げられていたかと思うが、この時のNZ政府の対応は本当に優秀だったと思う。迅速で確実な対応を、期限を決めて、十分な補償と共に行った。
そして首相は「出歩くな」ではなく「親切であれ」と言った。
企業広告は自社の利益や商品イメージよりも「Stay safe,Be kind」のメッセージを優先して伝えるため店頭の広告を急遽変更して街に掲げ、人々はテディベアを窓辺に飾った。
国って政治でここまで違いが出るもんなのかと、マスク2枚を郵送しはじめたらしい母国の政府を私は憂いた。


しかし、である。
いくらNZの政府が有能だからといって、今まさに就活をしていたワーホリ生までは掬い取れない。
学校卒業からほぼずっと毎日仕事をしてきたくせに、このタイミングでたまたま仕事を辞めていたなんて、そんな間の悪い奴がいるだろうか。

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いるのだ。ここに。アーダーン首相もびっくりの間の悪い人間が。
しかも歯の被せ物が取れ虫歯も治療して旅行も行って、出費が嵩みまくった挙句にロックダウンとなった人間が。
いやじゃあロックダウン前に呑気にゲームソフト買ってんじゃないよ。
でもこれは必要経費だから仕方なかった。


アーダーン首相率いるNZ政府の元、万全の体制で広げられた政府の網から見事転げ落ちた私は、最初こそ散歩しながらテディベアを数えて喜んでいたものの、最後の方は震えながら自分の銀行残高を数えて憂いていた。

面接後にジョブトライアルする予定だったいくつかの職場も、「今いる従業員をまずは守るため」と採用を見送られた。まあそりゃそうだ。誰だってそうする。私が経営者だってそうする。
まだ働いている恋人にひとまず家賃を払ってもらい、私は貯金を崩して食費を払うことにしていたが、当初一ヶ月の予定だったロックダウンは2週間延長され、だんだん貯金の底が見え始めた。

初めてのワーホリ、ロックダウン、無職、貯金3桁。
残念ビンゴが、またもリーチになってきた予感がした。