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ニュージーランドでの日々を書いています。

住所不定無職がNZ首都で路頭に迷う話

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他のファームに旅立っていく人々を見送り続けて、5月。
例年ブルーベリーのシーズンは5月前半の連休あたりまでだと聞いていたので、我々はまたもや次の移動先を考えねばならなくなった。
さながらジプシーである。

長時間勤務ができること、そして田舎すぎてお金の使い道がないことから、働く必要がない程度に貯金はあった(貯金総額3桁だったときの自分に教えてあげたい)。しかし6月にまた政府がビザを延長してくるかどうかが見えない以上、お金は労働できるビザがあるうちに貯めておこうという話になり、ブルーベリーファームの友人たちから色々話を聞いて候補を絞って、次はマンダリン(日本でいうミカンだ)収穫に行こうということになった。

友人によると、マンダリンファームは以前我々が住んでいたシティに比較的近い場所だという。
シティに戻るならその前に一度首都・ウェリントンに行ってみたいとの恋人の希望により、我々はまずここからウェリントンへ移動し、しばし観光してから長距離バスでシティに戻り、そこからさらにマンダリンファームへ移動することになった。
友人たちは一足先に車でマンダリンファームに行くので、現地で合流しようね!また数週間後!と友人たちを見送り、連休前に最後のブルーベリーを摘んだ後、ウェリントンへと移動した。


移動の前日、友人に教えてもらったマンダリンファームの人とテキストのやりとりをしていると、「じゃあボスに働けるかどうか聞いてみるわ」との返信が来て、
いやじゃああなた誰⁈(2回目)となった。
「多分働けるとは思うけどね」とのことで、もうちょっと既に嫌な予感しかしない。
(正式なビジネスメールならともかく、こちらの人のテキストメッセージは「Hi,I'm ○○.」で始まって2行目からもう要件に入ることも多いので、なんか番号載ってたし責任者っぽいと思って話を進めてると別に責任者じゃなかったことはまあまあある。そしてそれを2回経験している私は単純に学習能力がないのかもしれない)
いやでもまあどっちにしろ出発はもう明日だし!どうにかなるよね、ハム太郎
という勢いでその日は寝た。


翌日高速バスに揺られてウェリントンに到着。
お腹が減った‼︎と騒ぎながら荷物をホテルに置いて再度飛び出し、ひとまずカフェに入る。
とりあえず空っぽだった胃に物が入った満足感で満たされていたその最中、ファームスタッフからの「人はこれ以上要らないってさ!残念!」的な通知を受け取った。
そしてウェリントンに到着して30分くらいで我々のテンションは地に落ちた。
もうすっかり引っ越して仕事始める気満々だったのに、突然の住所不定無職行先不明アラサー2名爆誕である。カフェオレを持つ手が震えた。お洒落なカフェでオレっとる場合じゃねぇ。
「つまりシティに戻ったところで仕事はないということ?」
「そうかもしれないしそうじゃないかもしれない」
「というと?」
「この季節だし他の仕事ならあるかもしれない。ただ、どんな内容かは分からない」
「………」

そして我々の脳裏をよぎる、ストロベリーファームと腰痛。

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「よし、帰るか」
数秒の沈黙ののち、恋人はスンとした顔で私に宣言した。


シーズン終わりとはいえ、ブルーベリー自体はおそらくもう少し収穫できること、繁忙期が終わって我々が出て来た時点で宿もガラ空きだったことを思い返し、仕事も宿も未定の所にいくよりマシだろうということで、会議10分の後、我々はまたブルーベリーファームに戻ることを決め、重い足取りでカフェを出た。
いやこんな旅行の始まり方ある?
到着30分で旅行後の予定全部狂ったが??
ほぼ全ての引越し荷物を持って三泊四日旅行しにきたバカ2匹と化したが????

しかしもう旅行後がどうなろうが、
旅行中である今、ウェリントン観光が丸々3日間あることに変わりはない。
部屋の隅に押し込んだ引越し荷物たちを極力見ないようにしながら、
我々は精一杯首都観光を楽しんだ。

ちなみにウェリントンは死ぬほど風が強かった。
フォトスポットの1つに「wellingtonのロゴが途中から風で吹っ飛んでいる看板」があるので普段から風が強い場所なのだろうとは思うが、我々がその看板を見に行った2日目がちょうど曇天&強風でおまけに途中から雨も降ってきて、疲労が一周回って爆笑しながら全身びしょ濡れかつ強風の中フォトスポットを撮影した。ちょっと頭のおかしな観光客である。

 

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とはいえ日頃あまり運のよろしくない我々の旅行がよい天気に恵まれないのは想定範囲内だったので、予め組んでいた雨用プランに従って、そのあとは美術館を中心に濡れずに過ごし、雨が止んだら買い物も楽しめた。ちなみに私がウェリントンで購入した中で一番高額だったのはジョジョ3部の英字版コミックス、一番安かったものはダイソーのもこもこ靴下である。どっちも日本で買えるわ。


そして。

満を持して4日後、ブルーベリーファームに戻った。

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もう出て行くと告げていた仕事仲間たちは当然大量の荷物と共に真顔で帰還した私たちに驚愕し、何人かに代わる代わる「What happened?」と聞かれたが、もはやそれはこっちのセリフである。
What がhappenedして我々は此処にcome backしたのかもうI don't knowなのである。
仕事仲間からの質問を曖昧な微笑みで受け流しながら、我々は大量の荷物を引き連れ、元いた部屋へと出戻ったのであった。