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ニュージーランドでの日々を書いています。

引きこもり色白女が絶景アイランドに旅行した話

3日目は今回の旅行のメインとも言える、アイツタキ半日ツアーである。
クック諸島に行ったらアイツタキには絶対行かないと‼︎と色々なところで書かれていたのでとりあえず日程に組み込んだのだが、大正解であった。先人の言うことは聞くに限る。
とにかく綺麗な島だったので、今回はイラストよりも写真多め(※当社比)でお届けする。

アイツタキ島はラロトンガ空港から小型ジェット機で40分ほど飛んだところにある。40分ってまぁまぁあるなー、と思いつつ窓から外を眺めていたら、ちょうど雨上がりで虹がかかったアイツタキ島が見えてきた。



こ れ は 絶 景 の 予 感 ‼︎

出だしから虹背負ってるとは思わなんだ。ちょうど雨上がりというタイミングの良さも含め、この島ではなにか素晴らしいことが起きそうな感じがする。アニメ24話のラストで初回オープニング曲が流れた時並みのワクワク感があるではないか。一体何を言っているんだ私は。


とにかく小型ジェットから降りて、今度は小型のオープンバスに乗りながら島を見て回る。小さくて素朴な島であることは変わりないが、全体的に小綺麗で、高級コンドミニアムらしきものも多い。ハネムーンに人気だというのも頷ける。
そのあとは船に乗って、周囲の小島を巡りながら船上ブッフェを楽しむ。海の透明度がプール並みに高いので、船の上からでも海を泳ぐカメがくっきりと見えるほどだ。


ちなみにこのツアー、シュノーケル道具は貸し出しだしランチも飲み物もついていて料金も前払いなので、水着を最初から着ていけば持ち物はほぼ不要である。シュノーケルスポットに到着したら船が止まるので、ゴーグルや足ビレを貸りて船からそのまま海にドボンと飛び込める。なんだこれは最高か!海に飛び込んでいく人たちの笑顔がキラキラしている。私もキラキラしよ!とはしゃいで海に飛び込みかけたが、直前で自分の水泳スキルを思い出し、いったん浮き棒を借りてから真顔で足先から慎重に入った。ダサくて結構、安全第一である。

私は小学生時代から「寒い」というシンプルな理由でプールの授業が本当に嫌いだったのだが、水温は快適、魚も多くものすごく快適なシュノーケリングだった。しかも陸に上がれば太陽がぽかぽかですぐ乾く。こんなんなんぼ海に入ってもいいですからね、と私の心の中で芸人が話しかけてきたが、その通りである。こんなん何回でも入りたい。
途中上陸する島もザ・南国、という感じの島々で、現地ガイドのお兄さんにココナッツの割り方などを見せてもらいつつ楽しく過ごした。船の上ではスタッフ達がウクレレのような楽器を演奏しながら歌を歌い、最後まで楽しんでツアーを終わることができた。アイツタキ島ツアー、控えめに言って最高である。


夕方、小型ジェットに乗ってラロトンガ空港に到着し、そこからタクシーで今度はポリネシアンダンスのブッフェ会場へ向かう。本当はダンスとツアーは別日に組んでいたのだが、我々の行った時期はまだお客さんが少ない時だったので、観客席の都合で日程が変更になり、急遽盛りだくさんな1日となってしまったのだ。
ダンスショーは素晴らしかった。島の男性たちの打楽器に合わせた大迫力の踊りと、女性たちのフラダンスのような優雅な動き、それを照らすカラフルな照明も合わさって圧巻のステージであった。クック諸島に旅行に行くのであれば、アイツタキへのツアーと併せてポリネシアンダンスショーもぜひおすすめしたい。

翌日は特に予定のない自由日にしていたのだが、道中看板で見かけた「ナイトSUP」という看板が気になってホテルに帰ってから予約してみた。夕方からサップ(ボードに乗ってオールのようなものを漕ぐアレである)を漕ぐのだが、写真を見るとボード下に何やらライトが付いており、夜になると青く光りながら水に浮かんでいるのである。
明かりの少ない島で夜に海に浮かぼうものなら誰かが万一水中に落ちても見えないため、普通に安全のためにライトをつけたのだとは思うが、「足元が青く光るなんてFFっぽくて最高じゃん!ヒュウ!」と単純な私はすぐに予約した。現在進行形の厨二病である。


さて予約した時はさっぱり忘れていたのだが、私は体幹がヒョロヒョロである。運動神経も悪ければバランス感覚もなく、昔やっていたWii Fitには定期的に「体が ふらふらしています」と怒られていた体幹の持ち主なのである。青い光に飛び込む虫のような勢いで予約をしたが、揺れ動く海の上でボードに立つことなんて果たしてできるのだろうか。現地に行ってボードを見下ろし、私は初めて不安になった。遅い。

結果として、ボードに立つことはできた。海に落ちることもなかった。が、盛大に出遅れた。他のグループが対岸の小島に到着し始めている時、私は今来た島と今から行く島のちょうど中間にいて、生まれたてのヤギ並みに足をガクガクさせながらオールにしがみついてメェェと泣いていた。

ていうかワタクシ未経験って言ったのに颯爽と置いていかれましたけど‼︎ 普通スタッフ2人以上居たら最前と最後尾に付くもんじゃないですか⁈ 誰か助けて‼︎メェェ‼︎
ちなみに同じくサップ初心者だったはずの友人は速やかにコツを掴んでスゥッと進んで行き、膝を震わせる私を発見して方向転換しまたオールを漕いで戻り心配してくれる余裕すらあった。同じ初心者スタートでこの差はなんなの⁈メェェ‼︎
途中スタッフが1人来てくれたと思ったら、スマイル!と微笑みながらカメラを構えてきた。こちとら撮影用の顔を作るどころではなかったが何とか笑顔を捻り出したら、親指をグッとやってまた消えて行った。だから助けてってば‼︎


その後ボロボロになりながら小島にたどり着いた。先頭集団をかなり待たせてしまったはずだが、皆ボロボロのヤギを温かく迎えいれてくれた。そこからしばらく島を散歩し、スタッフによるファイヤーショーも楽しみ、完全に周囲が暗くなってから再びサップに乗って元の島へ戻る。
この時初めて多少の余裕が生まれて下を見た。ライトに照らされた海は青く光り、たまに通り抜けていく魚を照らす。上を見れば街灯やネオンライトに邪魔されない満点の星空がある。
あれ、これもしかして厨二病じゃなくても最高なのでは?
思ったよりめちゃくちゃロマンティックなのでは??

帰りはそこまで先頭に遅れを取らずにオールを漕いでいけた。なるほどこれはハマる人がいるのも頷ける。慣れてきたらなかなか楽しい。厨二病心で予約したナイトサップだったが、期待以上の夜となった。

翌日はお土産屋を回り、夜の飛行機でニュージーランドに帰国した。ちなみにその日はまたナイトマーケットがあると滞在中のホテルのスタッフから聞いたので、ピザ屋のおじさんにお礼を言いに行こうかとマーケット開始時刻まで近くの海辺でナマコを眺めながら時間をつぶしていたのだが、結局ナイトマーケットはやっておらず、最終日の貴重な数時間をナマコで潰すというまさかの展開となった。ないものを待っていたパターン2回目である。スタッフゥーーー!!となったがまあ仕方がない。今やそれも良い思い出である。ナマコ意外とかわいかったし。

クック諸島は私の中で、またぜひ行きたい場所の一つとなった。
お金を貯めて、また優しい島の人々と犬たちに会いに行きたい。

引きこもり色白女が絶景アイランドに旅行した話

バタついている間にだいぶ間が空いてしまった。
5月〜7月の間にクック諸島への旅行・NZへの帰国・日本への帰国・沖縄への旅行と色々あり、最終的に8月現在アルゼンチンにてこのブログを更新しているのだが、順に1つずつ書いていきたい。


さて、NZがかなり肌寒くなった5月下旬のことである。
NZから帰る前にどこか少しくらい旅行をしたいね、ということで、友人と話し合ってクック諸島に行くことにした。
NZから飛行機で4時間弱ほどで、とにかく海が綺麗、かつ年中ベストシーズンとも言われるほど温暖な島だそうで、以前ガイドブックか何かで見かけて以来ずっとひっそり行きたいと思っていた場所である。
コロナ禍になってからはファームやらシティやら往復に精一杯で旅行どころではなかったので、ワーホリ3年目にして最初で最後の本格的な旅行となった。
今回はまず、その話を書いていきたい。


当初は3泊4日、火曜の朝9時出発で昼の15時前に到着し、金曜の夜に帰国する予定でいた。
あまりお金が無いながらも精一杯現地を満喫するための朝出発&夜帰国プランである。
職場のマネージャーには火曜〜金曜日の4日間の休みを伝えて了解を得ていたのだが、
その後オーナーに何気なく旅行のことを伝えたところ、

クック諸島いいね〜!私たちが行った時は時差のこと考えてなくて危うく初日宿無しになるとこだったの、気をつけてね!」

と言われて(エ…?JISA…?)と真顔になりつつそっとチケットを確認してみたところ、なるほど我々は火曜の朝9時に出発し、月曜の15時前に着くことになっていた。まさかの時差22時間である。
ちょうど両国の間に日付変更線がある為こんな事態になっているのだが、日本とNZ間は13時間のフライトで時差3時間なのを無意識に基準にしていたので、フライト時間が4時間弱で時差が22時間あるなど考えてもみなかったし、よもや到着日が違うことに気づきもしなかったわけだが、まあフライト時間だけを見ていたにしても朝9時発→15時前着だと5時間半以上飛行機に乗っていることになるはずなので、シンプルに洞察力と算数力の欠如でしかない。
コロナ出現後初の海外旅行ということで、提出書類や陰性証明書の有無などは友人と再三確認しあっていたのだが、時差というコロナ禍以前からもあった当然の概念をすっかり忘れ去っていた。敵はウイルスより先に己のアホさ加減であった。

 

そしてこの時差は当然帰りも適応される。チケットに書かれている曜日は現地出発時の曜日であって、つまり金曜の夕方にクック諸島を出たらニュージーランドに到着するのは土曜日の夜中。つまり当初の予定であった「火曜朝に出発〜金曜夜に帰国の3泊4日ツアー」は「火曜朝に出発して月曜昼に到着〜金曜夕方に現地発で土曜夜着の4泊6日ツアー」という、字面だけ見たら矛盾だらけのプランに変更となったのだ。宿泊日が増えてしまったので現地でのホテル宿泊も予定より増えるし、金曜帰国予定も実際は土曜日だったため職場にもう1日休みを申請せねばならない。既に出発前からバタバタである。大丈夫なのか序盤からこんな感じで。

 

出発当日、早朝から飛行機に乗り込んでいざ出発である。クック諸島はハワイのようにいくつかの小島が連なる島々の総称で、国際空港はその中のラロトンガ島にしかない。またNZとクック諸島間はコロナ陰性結果証明書等は必要なく(2022年5月下旬時点)、島に入るにあたっては事前にスマートフォンから情報を登録しておけば追加書類は必要ない。
…とはいえ機内で渡される「携帯品・別送品申告書(黄色っぽくて細長いアレだ)」は変わらず記入が必要である。私は機内で受け取って流れるように座席シートポケットに差し込み約2分後に爆睡しはじめ、そのまま機内に置き忘れた。結果、屈強そうな係員に横に連れて行かれて新しく書かされた。完全に出来の悪い生徒の居残り勉強の図である。ちなみに出来の悪い生徒すぎてペンの一本も持っておらず、その場で屈強そうな係員に借りた。やさしい。そして本当にすいません。
さっきから私が躓いているのはずっと、コロナが広がる前から海外旅行には必ずあるものだけである。本当に大丈夫なのか序盤からこんな感じで。

初日はラロトンガ島の空港近くの格安ロッジに泊まることになっていたので、とりあえずそこに行ってまず荷物を置く。早朝出発のおかげでまだまだ時間はたっぷりある。天気もいいしいざ散歩に参らん!とワックワクで行き先を調べようとした我々は、手持ちのスマホで検索しようとしてふと気がついた。


Wi-Fiが入らねぇ。

繰り返すが、飛行機で4時間以内に着くとはいえここは海外である。通貨はそのままNZドルが使えるし使用言語もNZと同じ英語だがここは海外である。通貨が共通でも、国が違えばSIMカードは異なる。かつ島にスタバやマックのようなフリーWi-Fiを提供している場所があるかは未知数である。こちとらスマホの使いすぎでストレートネックや肩こりに悩み始め、その対策動画を背中を丸めてyoutubeで眺めつつなるほど〜と言いながらまさにその瞬間ストレートネックを悪化させているような人間なのだ。フリーWi-Fiがなければ新しく情報を調べることもできないし、事前にブックマークしていた情報ページすら見られない。かつ安さと空港からの近さだけで選んだような宿のため、受付もなければマップもなく、疑問を聞けるスタッフもいない。さっきまで輝いていたワクワクフェイス×2は一転してアセアセフェイス×2になった。令和4年にこんなに丸腰なことってあるんだ。


未知のエリアで情報ゼロの丸腰スタートかつマップなしとなった我々は、とりあえずマップ開拓をすべく日焼け止めだけ塗って外に出た。空港では1時間フリーWi-Fiが使えたので、いったん空港まですごすご戻り情報を調べる。
島唯一の回線であるボーダフォンのショップが島の中心にあるようだったので、とりあえずそこまで行ってSIMカードでももらってくるかと思い、目の前のホテルの受付で聞くとここから歩いて15分くらいだとのこと。手書きの地図を渡してくれたので、それを頼りに道を進む。分かれ道は数えるほどしかないので、迷うことは基本的にないはずである。

途中、5匹くらい犬に会った。野犬なのか飼い犬なのかよくわからない犬がそれぞれ縄張りを守っているが、どの犬も大変フレンドリーで、吠えたり暴れたりはしない。ゆっくり尻尾を振ってこちらを見つめ、特に反応がなければ少し距離を取りつつ縄張りを出るまで一緒に歩き、好意的な反応があれば撫でてもらいに近寄ってくる、という感じである。最初は海外の野犬ということもあり少し怖かったが、無理には近寄ってこないことが分かりすぐに慣れた。島の人も犬が来たからといって近寄ることもなければ邪険にもしない。人間と犬、一緒に暮らすのが当たり前、という感じである。島の暮らしっぽい。(大味な感想)

そして犬に癒されながらボーダフォンショップに着いた頃には、なぜか40分以上が経過していた。
いやじゃあ15分は嘘すぎるだろ。
でも島の人々は恐らく車生活が当たり前なので、リゾート地まで来て車もWi-Fiもない状態で全てを徒歩で済まそうとする観光客への案内はあまり慣れていないのかもしれない。これもまた我々が悪いのかもしれない。海外で運転できる自信がない者はそのくらいの不便や不運は享受すべきなのかもしれない。
そしてやっとこさ辿り着いたショップは到着時点で閉店時間を5分ほど過ぎており、店は普通に閉店していた。嗚呼我が人生、である。
しょんぼりしながらまた同じ道のりを40分かけて帰宅し、宿泊場所の目の前にある別のホテルで夕食を取った。明日からのホテルにはWi-Fiがあることを切に願った。


翌日チェックアウトを終えた後、またもやWi-Fiをもらいに我々は空港に向かった。もはやWi-Fi乞食である。
島には時計回りのバスが13:00、14:00、15:00…と1時間ごとに、反時計回りのバスが13:30、14:30、15:30…とこちらも1時間ごとにそれぞれ走っているとのこと。どちらも空港を起点に一周するので結局同じバス停を巡ることになる。行きたい場所が島の右側か左側かでどちらのバスに乗るか決めればいいわけだが、賃金は一律なので初回は反対側のバスに乗ってあえて遠回りをしながら窓の外を眺めるのも観光がてら良いかもね、という話になり、我々はバスに乗ってぐるりと島を一周しながらホテルに向かった。

次のホテルはとても良いところだった。宿泊者専用のプールはあるし、朝食もついているし、部屋は綺麗でおまけにかわいい猫もいる。課金制だがWi-Fiもあるし、そして受付に人がいる。念願のシチュエーションに我々は涙を流し、そして実感した。ホテル代はやはりケチるものではない。

部屋に入って荷物を置き、ホテルの施設にしばしキャッキャとはしゃいだあと、島のマーケットについて受付に聞きに行った。なんでもラロトンガ島の有名なビーチであるムリビーチで週何回かナイトマーケットが、そのほかの場所でも朝のマーケットが行われているらしい。島の市場とか素敵なものがありそうじゃな〜いキャッキャ!と到着そのままのテンションで聞きに行った我々は、朝に弱い己を鑑みて朝のマーケットは早々に諦め、その日の夜行われるらしいナイトマーケットに行くことにした。

ナイトマーケットは20時過ぎくらいまで行われていて、我々は確か19時半くらいに行ったのだが、すでにやや終了の気配が漂っていた。とはいえまだ数店舗はやっていたし、私たちのお腹を満たすには十分である。日頃ガーリック嫌いの恋人に配慮して食べられないガーリックシュリンプを心ゆくまで満喫し、私は大満足であった。
帰りのバスを失うまでは。

我々はその日、「バスは2ルートある」とその日の午前中に学習していた。そしてホテルまで最短で行けるルートAのほうのバスをバス停で待っていた。ルートBのバスが1回来たが、「あれ〜違うねぇ」と言いながら流していた。その後不安そうな友人に「もしや夜になるとダイヤが変わるのでは?」と言われ、近くのショップの人にも一応バスがまだあるかどうか聞きに行くと、「バスはよく遅れるからね〜」と言われた。それは島の一般論であり絶妙に答えになっていない気もしたが、そのまますごすご引き返す。

そうこうしているうちに1時間経ち、ナイトマーケットの店も全員撤収を始めた。1時間半近く経ち、「もう次来たらルートAだろうがBだろうが乗ろう」と話していたのだがどちらも来ない。事前に得ていた情報では終バスの時間ではまだないはずだが、相変わらずホテルの外ではWi-Fi難民なので検索もできず確信も揺らいでいく。1時間半もしたら普通はAもBも2本ずつ来ているはずなのだ。ただ暗闇に突っ立っているだけの人間2体を心配してか犬が何匹か近くに来たが、もはやそれすらちょっと恐怖である。せっかく良いホテルになったと思ったらまさかの…このまま…犬と雑魚寝…⁈
お腹も膨れており外は快適な気温だったので危機感がだいぶ薄くはあったが、周囲に人気はなくなりバスも来ずインターネットも使えず暗がりに平和ボケした日本人2人+野良犬2匹、とは文字で並べるとまあまあヤバい状況ではある。ただし星は綺麗だった。

犬と一緒に悲しみの遠吠えでもしてやろうかと思い出した頃、ナイトマーケットで最後まで残っていたピザ屋のおじいちゃんがついにマーケット会場の照明を消した。あっ遂に誰もいなくなるのね…と思ったら、そのままおじいちゃんが近づいてきて、我々を車にのせてホテルまで送り届けてくれた。突如神降臨である。しかも我々は両方ピザを買っていないのに。数時間前の自分を叱りとばしたい。なにをガーリックシュリンプを食べているのか。そこはピザだろうが!
ちなみにこの島の治安の良さと、相手がおじいちゃんでありこちらが2人であること、そしてこの状況から今回は車に乗ったのだが、普通海外で(というか日本でも)知らない人の車に乗ってはいけない。良い子は真似しないように。というかそもそも良い子は見知らぬ土地でWi-Fiもない状況で呑気に1時間半もバスを待たないように。

そして途中、一台バスとすれ違った。ルートBのバスである。
今?!
この渋滞もなにもない島でアンタどこに遅れる要素があるのよォ!と思ったがまあ仕方がない。とにかくルートBは普通に遅れていただけだった。


おじいちゃんに土下座の勢いでお礼を言って、半ば無理やり心ばかりのお金を渡してホテルに無事到着した。そのあと調べたところによると、バスのダイヤは変わっていなかったものの2本あったバスのルートが夕方からは1本になっていた。
つまり我々が探していたルートAのバスはその時間、もう無かったのである。我々は存在しないものを野犬と共に待っていたのである。あそこで1本来たバスを見送ったことが致命的であったのだ。もうバス自体が1時間に1本しか来ないのだから。


色々と疲れ切って、その日はそのあと即座に寝た。良いホテルのベッドは我々の徒労を優しく包み込んでくれた。繰り返すが、ホテル代はやはりケチるものではない。
次からは、この旅行のメインとも言える「3日目・アイツタキ島」を含む後編をお送りする。

ワーホリ延長女のちょっと怖かったある夜のお話


私が海外に行く際、最も重視するのは「治安」である。


綺麗な景色も美味しい食べ物も物価も大事だけれど、方向音痴な自分が安全に生き残るためにはなによりも治安が第一だ。欲を言えばふらっと歩いてポケモンGOとかもしたい。
しかし方向音痴な上に腕力がゴミかつコイキング並みにボーッとした顔をしている自覚があるので、うっかり治安が悪い路地などに迷い込んだらむしろこちらが捕獲される側になりかねない。コイキング顔した個体値低めのカモネギ、どう考えても普通のモンスターボールで一発ゲットだぜ、という危機感だけは辛うじてあった。
その結果、昔から選択する旅行先が「アイスランド」「マルタ共和国」などになり、友人たちに散々「それどこ?そして何故?」と言われてきた。ちなみに両国とも期待を裏切らない治安のよさで大満足の旅行となったが、治安とは関係のない私が勝手に巻き起こしたハプニングはたくさんあったので、この旅行記もいつか書く。平和な場所でもセルフで色々引き起こすのだから、危険な場所で色々引き起こしていたら心臓がいくつあっても足りない。

今回ニュージーランドをワーホリ先に選んだのも第一の理由は治安の良さだった。現在に至るまで今のところそこまで危機を感じた瞬間はないが、今月一瞬ヒヤリとした(※先に言っておくが最終的に治安は関係なかった)出来事があったので書いておく。

 

コロナから回復してからというもの、1ヶ月ほど私はなかなか寝付けないことに悩まされていた。
後遺症というやつかもしれない。ちなみに頭痛も定期的にあって、薬を飲んでからじゃないと皿洗いすらしんどい時もあった。
ネットで調べてみたところ、「コロナの後遺症は全200種類以上!」と妙に明るめな文章が出てきて肩を落とした。集め甲斐のあるおまけのシールみたいな言い方をするな。ちなみにコロナの後からなぜか職場の人たちと定期的にやっていたスマブラの勝率もかなり下がっていたが、もうそれもまとめて後遺症だと言い張った。200種類以上もあるならどこかにスマブラの勝率に関わる症状もあるだろう。(多分ない)


話を戻して私がなかなか寝付けなかった件だが、具体的に言うと電気を消して布団に潜ってから毎日2時間くらいただ目をカッ開いて天井を見つめて過ごしていた。同じくコロナだった彼氏は隣でスピスピ寝ていたのだが、私だけが寝れなかった。男性の方がコロナ発症時の症状は重めだが後遺症は軽め、という記事も見た。全体としての真偽は不明だが、少なくとも我々のケースはその通りとなったようであった。
そんなわけでしばらくややしんどめの日々を過ごしていたのだが、ある日珍しくスッと入眠できた日があった。(なぁんか今日はいい感じに眠れそうな気がする!)と思った5分後くらいにはもう寝ていたと思う。わあ良かった良かった、と薄れゆく意識の中で思った。明日はきっといい日になるよね、ハム太郎。と脳内でロコちゃんの声がした。

 


その数時間後。
私は自分の部屋のドアが開く音で目が覚めた。

最初は恋人がトイレにでも行ったのかと思っていた。
しかしその直後、隣から「Hey what are you doing?」という恋人の声が聞こえたのである。隣から。
そしてドアのほうを見ると、暗闇の中で誰かが立っていたのである。

キャー‼︎と心霊番組だったらSEが入る場面だが、私はびっくりすると声が出なくなるタイプなので完全に真顔かつ無言のままドアを見ていた。これがゾンビ映画名探偵コナンジョジョの奇妙な冒険だったら我々は「キャー‼︎」のSEの後に無力なモブとして即死んでいただろう。こちらも暗いし廊下も暗めなので誰なのかはわからなかったが、とりあえず手元に武器的なものは持っていないことだけはうっすら分かったので、その人物を注視しつつもやりとりは一旦恋人に任せ、自分は「背後の窓って人が逃げられる程度には開くんだっけ?」等と逃走経路を考えることにした。冷静に見せかけた現実逃避である。頑張れ恋人。


暗闇の中に立っている人物は、扉こそ開けたものの中には入ってこず、ただぼんやり立っていた。余計に不気味である。
隣の恋人がもう一度「What are you doing?」と問いかけると、何かモゴモゴ答えはしたが聞き取れはしなかった。しかしその声で、これは隣の部屋のフラットメイトだと分かった。しかし分かったところでなぁんだ良かった☆とはならない。未知の恐怖が身近な恐怖に変わっただけである。フラットメイトであっても夜中に部屋のドアを開けられて暗闇の中でただ無言で立たれるのは普通に怖い。
「Are you sleeping?」と言いながらとりあえず恋人が立ち上がり、そのままフラットメイトを廊下まで押し出して扉を閉めた。すごい怖い割には普通に素直に押し出されていった……と呆然としつつ扉の外の気配に耳をすませていたら、その後は別のドアを閉める音がした。どうやらトイレに行ったらしい。
しばらくしてまたドアの音がして、今度は隣の部屋に無事戻った音がした。全然よくわからなかったが、おそらく夢遊病か酔っ払いかどちらかだろうと我々は結論づけた。隣の恋人は「こんなの安心して眠れないよ」ともっともな不満を呟いていたが、私はそれに同意したあと割とすぐに普通に寝た。裏切ってごめん。我ながらあまりに繊細とはかけ離れた自分にたまにびっくりする。

 

翌朝、案の定あまり眠れなかった恋人が元気なく仕事に出かけて行った後。さすがに今回のは一旦報告すべきでは、と思ってフラットオーナーに昨夜あったことを伝えると、洗面所の横の部屋で寝ているオーナー夫婦は仰天し、
「私たちも夜誰かが洗面所の床を執拗にクイックルワイパーかけてる音がして目が覚めて、でも音はするのに洗面所の明かりはついてないし、おかしいなあと思ってたら洗面所と繋がってる引き戸が急に空いて、手だけがヌッと一瞬見えて、またすぐ引き戸がしまったの…お化けかと思ってた…」と言ってきた。
下手したら我々より怖いな!!!そして私が報告しなかったらお化けとして処理しようとしてたんかい!でも確かに手だけ見えるというのは全身見えるより怖いかもしれない。せめてもの救いは、暗闇でクイックルワイパーかけてる幽霊ってなんか綺麗好きっぽいねという点くらいである。これを救いとしてカウントしていいのかわからないが。

 

2組が被害(?)に遭っているため、何があったのかだけでも確認した方がいいだろうという話になり、その後オーナーがフラットメイトの扉をノックしたのだが、なんとフラットメイトは昨晩のことをまったく覚えていなかった。昨晩酔っ払って帰宅したのは確からしいが、帰宅したあとは記憶がないという。
いや怖!!!暗闇に立ってたとか手だけ見えたとかよりもうそのお酒の力が怖い。私も恋人も普段お酒は一切飲まないので酔うことに関する知識は人並み以下なのだが、それでも酔って色んな部屋の扉を開けた挙句に洗面所で床掃除をするというのは、まあまあ特殊な酔っ払いな気がする。
普段は真面目な好青年のフラットメイトはその後めちゃめちゃ謝ってくれた。酔っ払っていたとはいえ記憶がない間にやらかしていたとは、さぞ肩身が狭かろうと思うと気の毒である。一方私の恋人は、その後数日間は誰かが夜中洗面所に立とうとドアの開閉音を立てるたびに隣でちょっと緊張していた。こちらもまた気の毒である。

 

海外に長期滞在する、となった時、ホームステイやバックパッカー、フラット等様々な選択肢があるが、利点とデメリットを考えつつ滞在先を選ぶことをお勧めする。一般的にフラットはバッパーよりは安全とされているものの、ニュージーランドでは共有スペースがあるタイプのフラットには個人の部屋に鍵がついていないことも珍しくない。貴重品は鍵をかけてスーツケースにしまっておく、などの最低限の対策はもちろん大事なのだが、今回の様に悪意がなくとも酔っ払ったフラットメイトが部屋を間違えて入ってきたりする可能性もあるのだなぁと3年目にして気づきを得た。悪意のない相手から学べたのは幸いである。治安の良い国にいても、万が一の想定はちゃんとしておこうと思った、そんな一夜であった。

ワーホリ女がワーホリ先でコロナに振り回された話

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お久しぶりです。
1月下旬からダブルワークを始め、2月は全然ブログを書く時間がなく、3月に至ってはなんとコロナにかかっていました。
私の場合は幸運にも軽症だったので風邪のような症状で済んだし別に誰の参考にもなりはしないと思いますが、記録として書いておこうと思いますのでご興味のある方はお付き合いください。

 

2月中旬。
この時はNZにもかなり感染者数が増えてきて、私もブースター接種打とうかなァと思っていた時にちょうど私の職場が1週間ホリデーとなることが知らされ、じゃあこの期間に打って副反応に備えるか、などと考えていた頃であった。
私と恋人はともに2回目までのワクチンは終えている。私は3回目の接種を希望していたが恋人は自身の3回目の接種には消極的であったため、ブースター接種は私だけが受ける予定だった。ホリデーの時にワクチンを受けたい旨を伝えると、彼は週末以外基本的に夜まで仕事をしているため、「平日に打たれると看病ができないから金曜日に打ってくれ」と言われ、私は金曜にちょうど友人とランチに鍋を食べる予定だったので、その帰りにワクチンを打つことにした。友人には「鍋やった帰りにワクチン打とうとする人、珍しいね」と言われた。多分それはそうだろう。


しかしその金曜、私が友人と会っている間に恋人から「体調が悪い気がする、コロナかもしれない」とのメッセージを受け取った。
今かよ!!!もう友達ともレストランでマスク外して喋っちゃったよ!!!
と思わなくもなかったが、まあコントロールしようもないことだから仕方がない。彼が本当にコロナで倒れている時に私がワクチンの副反応で倒れているのは違うだろと思ったので結局ワクチンは打たず、友人の勧めでドラックストアにてスポーツドリンクや冷えピタを買って帰宅した。友人に至っては自分が今まさに会っている人間に濃厚接触者疑惑が出ているというのに、わざわざドラックストアまで付き添ってくれていた。持つべきものは友である。

結局その日、恋人は調子が悪いと言っておきながらきっちり定時まで仕事をして帰宅した。日本ならいざ知らず、NZではめずらしいタイプの社畜人間である。そして翌日の土曜にはケロリとした顔でゲームをして、日曜日に「調子悪かったのは気のせいだったみたい!」と高らかに宣言した。……まあ、なによりである。心配させた友人にも報告メールをして、その時はそれで終わった。

そしてその翌週は恋人の誕生日だった。実は母国にいる恋人の家族が、彼に向けてプレゼントを1ヶ月も前から速達で送ったにもかかわらず、郵便局員の手違いでその荷物は速達でなぜかハワイに届いており、しかもこの計画はサプライズであったので私の恋人は何も知らず、彼の妹と私だけが影でやりとりをしつつアワアワしたり残念がったり毎日荷物を確認したりしており、結局誕生日までには届かなかったというなかなかのカオスっぷりを呈していた。まあ最終的にサプライズにさえなれば当日じゃなくても喜んではもらえるだろう、とりあえず届くのを待とう。

…と我々が結論づけたその数日後のことである。


「体調が悪い気がする、今日は休む!」
と宣言して彼が朝から仕事を休んだ。そのセリフ先々週も聞いたぞと思わなくもなかったが、どちらかというと仕事人間の部類なので朝から仕事を休むというのはかなり珍しいことである。先々週の事例があるのでいったん丸一日休んでもらい、翌日も具合が悪ければ検査するかなと思った。
この時点でNZの1日の新規感染者数は平均2万人であった。人口500万人しかいない国で1日につき2万人というのはなかなかのハイスピードだし、まあいつ来ても不思議ではない。PCR検査も結果まで1週間待ちと言われており、人によっては結果を待っている間に隔離期間の方が先に終わってしまうレベルである。
ただ、この頃ちょうど3月からRATテストという簡易検査が入手できるようになっていた。Webサイトか電話で事前申し込みをして、センターまで取りにいくシステムだ。翌日も彼の調子が良くならなかったので、問い合わせて簡易検査キットをもらいに行ったら計6つのキットをもらった。え?なんで6つ?と思いつつ帰宅して調べると、どうやら当日・隔離期間3日目・隔離期間10日目ぶんらしい。政府の対応もその時に応じて変わっていくので、もはや窓口では説明せず後で各自ネットを見てもらう形式を取っているとのこと。現時点で既に仕組みは変わっているかもしれないが、少なくともその時はこんな感じだった。もうだいぶ投げっぱなしである。

そして簡易検査をしたところ、彼が陽性で私が陰性だった。
今度はマジなんかい!!
と思わなくもなかったが、まああの一回の謎のフェイントも別に本人のせいではないので致し方ない。体調不良に敏感なのは特にこのご時世良いことである。お互い職場に連絡をして、フラットオーナーにも連絡をした。フラットにはオーナー夫婦ともう一人フラットメイトがいるが、陽性が一人出た時点で全員が濃厚接触者になってしまうため、全員10日間の隔離となり、仕事にはいけなくなった。買い物もできるだけ控えるようにとの指示だったが、全員10日間買い物をしないのはほぼ不可能だったので、週一回オンラインでオーダーしたものをオーナーが車で全員分スーパーまで受け取りに行ってくれた。ありがたい。

そして恋人はこの時点から部屋から出られなくなったため、私が全てを行うことになった。私は陰性だが、他に部屋の空きもないし彼と同じ部屋で過ごすわけだし同じベッドで寝るわけだし、いつ陽性になってもおかしくない。共有部分ではマスクをし、手の消毒、触ったものにも除菌スプレーをして、食器は皆のものと分け、食事は部屋にトレイで持っていく。寝るときも一応マスクをしたが、まぁあまり意味ないっちゃない。
自己隔離3日目くらいから私にも頭痛の症状が現れたため2回目のRATテストをしたのだが、結果はまたも陰性だった。あくまで簡易テストなので、2割くらいの確率で結果が間違っていることがあるらしい。とはいえ8割くらいは正しいはずなので、このタイミングでただの風邪である可能性もなくはない。だとしたら空気を読め。絶対に今じゃないだろ。彼が部屋から出られないし、私も体調が良くはないのに陽性ではないので、ヨボヨボしながら食事を作って部屋まで運んだ。ちょっとした老人介護状態である。
ちなみに鍋の時に持ち上がったコロナ疑惑で買っておいたスポーツドリンクと冷えピタだが、結局ほとんど私が使った。未知のものは食べない、飲まない、使わないのが恋人の信条であった。たとえそれが恋人である私が体調不良に効くからと差し出したものであったとしてもだ。詐欺に引っかかるリスクは低そうで何よりである。思い遣りは空振りとなりちょっと虚しい気がしなくもないが、少なくとも私の早期回復には役立ったので結果的にはあの時買っておいてよかった。私が私に救われた。


私の症状は主に喉の痛みと頭痛が3日間、鼻水と食欲不振が2日間という感じだった。彼は発熱と鼻水が2日間、あとは喉の痛みと咳がしばらく続く感じだった。しかし最初に陽性反応が出てから5日、彼の方はもうあと咳くらいかなと思っていたところで彼から「味覚がない気がする」と言われた。私が個人的にコロナで恐れていた症状がこれである。ええ…そんなの絶望やないかい…と食べるのが好きな私は勝手にショックを受けたが、元々食事にそこまで執着のない彼はあまり反応を見せず、なんなら味覚がない間であっても私よりよく食べていた。よくその状態で食欲あるな…いや良いことだけど…偉いけど…。

私の症状がピークを超えて頭痛も取れ、彼の味覚がなくなって2日が経ったところで、私が食事の準備をしていたときにフラットオーナーさんが「そういやなんか荷物届いてたよ」と大きな段ボールを持ってきた。差出先は彼の母国、そして差出人は彼の家族、中身は母国のお菓子である。
今かよ!!!!!
とこの1ヶ月何度目かわからないツッコミをしてしまった。2月後半の彼の誕生日に向けて1月の後半に速達で送られた荷物が間違ってハワイまで行ってようやくNZに届いたのが3月上旬でしかも中身が食べ物で本人は2日前から味覚を失っている!もうてんこ盛りすぎてどこからつっこんでいいのか分からない。どこからつっこんでいいのか分からないがとりあえずこれを持っていくのは今ではない気がする。フラットオーナーに事情を話していったんリビングに荷物を置かせていただき、彼の妹に相談のメッセージを送った。返信を待つ間にそのへんにあったラムネを一粒渡して食べさせてみる。唐突にラムネを一粒渡され食べろと言われ、完全に不審な顔をしつつもとりあえず食べた恋人は真顔のまま「味はしない」と言い、私は崩れ落ちた。2ヶ月かけて届いた母国のお菓子を食べるタイミング、絶対に今じゃない。

その翌日、彼の妹からの返信で「母がもう渡しちゃえばって言ってる、懐かしいもの食べたら味覚戻るかもしれないし」とあり、そんなディズニー映画みたいな展開になるか〜いと思いつつも箱を持って部屋に入った。彼は大変喜んで箱をあけ、わーい!と口に一つチョコレートを放り込み、嬉しそうにこう言った。
「あまーい!」
戻るんかい!!!!
そんなことある?!激しくずっこけたが、まあ喜ばしいことには変わりない。私のブースター接種も彼の誕生日プレゼントもコロナ発症も全てタイミングが悪いように見えたが、ブースター接種せずに買い物して帰ってきた時の品物のお陰で買い物しづらい環境下でも私は無事生きながらえたし、誕生日プレゼントが遅れたおかげで味覚もすぐに戻ったのだし、結果オーライではないか。とは言いつつやはりブースター接種を受けておいて健康に看病に集中したほうがよかったのではないかと思わなくもない。あの本コロナ前の弱めのジャブみたいなのは結局一体なんだったんだよ。

最初の発症から1週間、もうお互いすっかり平常通りに戻り、症状といえばたまに咳が出る程度のところまで来て、フラットオーナーが「もう1週間経ったし毎回ぜんぶ消毒するのも大変でしょう、君が今も陰性ならもう少し対応緩めていいんじゃない?」と余っていたRAT検査キットをくれた。そうですねえと言いながらキットを受け取り、部屋でやってみることにした。ちなみにRATテストは鼻に棒をつっこんで粘膜を取ったものを検査液に入れ、キットに垂らして15分待つ。私はこの鼻に棒を入れ粘膜を取った直後に毎回連続4回くらいクシャミが出る。
15分後にキットを見て、線が一本出ていれば陰性、二本なら陽性、0本なら測定不可でやり直しだ。さて今回の結果はと見てみると、線が二本出ていた。先述した通り、線二本の場合は陽性である。

 

もう一度言おう。
陽性である。

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今かよ!!!!!!
もう何度目か以下略。ほぼ完全に症状が収まり、オーナーさんも善意でテストを提案してくれたというのに、感染防止対応をより強化するべきな結果が出てしまった。というかこの場合、単純に2回目(体調不良時)のテスト結果が間違っていたのか、2回目にテストした時は本当にただの風邪で、抵抗力が弱ったところで彼のコロナがうつって7日目の今陽性になりかつ無症状なのか、もしくはこれからまた症状のピークがくるのか、もう全然分からない。明確に分からないぶん彼よりタチが悪い。私はここから何日間隔離なんだ???

とはいえ、NZのルール的には最初の陽性者が陽性になってから10日経ち、もう一度RATテストをして陰性だった人は他に陽性者が増えているかどうかに関わらず、自分の体調がよければ仕事に復帰できることになっていた(ちなみにこのルールは我々の隔離期間が終わる前に改正され、隔離期間が10日から7日に短縮された。隔離者が多すぎて社会インフラが回らないからである)。つまり私が今陽性になったとしても、ここから気をつけなければいけないのはもはや私一人なのである。皆は日常に戻れるのだ。な、なんかずいぶん扱いが違いませんか…い、いや皆様の日常生活のお邪魔をしなくて済むのはとても良いことなんですけれども……ゴニョゴニョ……。

そんなこんなでしばらく様子を見ていたのだが、フラットオーナーもフラットメイトも引き続き陰性で自宅待機は解除され、彼は軽い咳はたまにあるものの一足先に陰性となり、私も特にそれ以来体調が悪化することもなく、先日ついに陰性に戻った。とりあえずこれで私たちのコロナは終わった、と思って良さそうだ。幸運にも悪化はせず、身の回りにも私たち以外に感染者はいなかったが、体感としてはとても長い10日間だった。

今回一つ思ったことは、今回のように対応が日々変わるような病気が巷で流行っている場合、病院あるいは検査キットがもらえるところはどこなのか、具合が悪い時にまずどこに連絡するべきなのかを健康のうちに把握しておくことが結構重要だということだ。日本でもそうだとは思うが、特に海外にいる場合、頭痛などを抱えたまま英語のサイトを読んでも目が滑るし、電話では機械音声で「○○の症状の方は1を〜」的な案内をされて○○の部分の英単語が聞き取れずボーッとしているうちに電話が切れるし、もうとにかく症状によっては普段の3倍は英語が聞き取れないと思った方がいい。いつポンコツ化しても大丈夫なように、できる限りシンプルに「まずはここに電話、検査キットはここでもらう」等、情報を自分で整理しておいた方がいい。最終手段としては英語が喋れる日本人の友達に助けを求めることがあるが、これは迷惑をかけてしまうのであくまで最終手段である。(でも本当にしんどい時に頼れる友達がいるというのは大事なことだ、海外生活においては特に。)


さて、部屋に引きこもりっきりの状態からいきなり仕事に出たら一瞬でまた体調を崩し筋肉も死ぬ自信があるので、今から私は散歩の準備である。こちとら10日間スマブラポケモンアルセウスとFFピクセルリマスターしかやっていないのだ。バーチャルでは相当経験値を積んだが、現実世界での歩数はほぼ2桁台の日々であった。でも見えない相手と戦っていたことは事実であるわけだし、なにがしかの経験値はリアルでだってきっと貯まったはずである。と、信じたい。
ひとまずは、ほぼゼロとなった筋肉のレベル上げに勤しみます。では!

三度目のビザ延長を経て三度目のNZでの正月を迎えた話

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あけましておめでとうございます(遅い)。

 

気づいたらもう一月も後半でびっくりである。今まで日本では接客業、こちらでもファーム等で働いていたため、社会人になってこのかた正月三が日が休みであった試しがなかったのだが、今年は3日間もお休みを得たし、料理好きなフラットオーナーがお雑煮をお裾分けしてくれて、久方ぶりにちゃんとお正月間のある正月を過ごした。

ちなみにその3日間の休み中外出したのはたった1日だったのだが、まず朝から外出先で突然スマホがインターネットに繋がらなくなり、データ容量を使い切ったかと思いマックに入って無料WiFiに繋いで確認したもののデータ通信容量にはまだだいぶ余裕があり、じゃあ使ってるメーカーのシステム障害か?とTwitterやグーグルで検索するも特にどこにも問題はなく、首を捻りながらひとまず注文したマックのフードを受け取ったら私のアイスラテだけが全然来なくて、天下のマックは年始から忙しいなァ大変だなァと思っていたらカフェエリアの店員さんがメインカウンターに移動しスタッフたちが完全に動きを止めて談笑しながら去っていったのでアレ?と思って確認したらどうやら注文は忘れられていたし、ようやく全部揃って席についた頃には隣の彼氏はもちろんほぼ食べ終わっていたし、私のポテトは当然のごとく冷めていた。

 

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なるほど年始から絶好調である。絶好調すぎてポテトがしょっぱい。今考えると20分近くただただ待っていた私もまあまあアホである。アイスラテ作るのに20分、絶対いらないだろ。
そして私は残りの休暇を引きこもって過ごすことを決めた。たとえ天気が良かろうとも関係ない。この調子で出かけたところでロクな結果にはなるまい。こんな日は外に出ずゲームに興じるに限るのだ(いつも通り)。

こんな感じで相変わらず元気に少し残念な日々を送っているので、こちらのブログも来週からまた週一くらいでぽつりぽつりと更新していく予定である。基本的に残念なできごと日記的な感じにするつもりだが、もしNZに関して知りたいことなどがあればコメント等でリクエスト頂ければと思う。書ける範囲で書いてみます。

では、今年もよろしくお願いします!

ワーホリに行った女が結局日本食屋で働いてる話

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今度こそようやく本当にブルーベリーファームに別れを告げ、6月下旬、我々は昨年末まで住んでいたシティに再び戻って来た。

私の新しい勤務先はいわゆるジャパレスである。
ワーホリに行く前、留学エージェンシーの方々はこぞって言う、「結局ジャパレスでしか仕事せず英語力伸びずに帰ってくる人も多い」と。
ジャパレスで働く=ワーホリ失敗例、みたいな感じで。
せっかく英語圏にいるのに、日本語である程度仕事ができてしまう環境はよろしくない、と。
それはたしかに一理ある。せっかく来ているのだから、仕事中も英語環境に身をおけば英語力は格段に伸びる。英語力という面で言えば、現地のカフェなりレストランなりで働くべきであろう。

だが、生活力低めの物ぐさ人間にとって、ジャパレス勤務には明確なメリットがひとつある。

”賄い”である。

回数は店にもよるが、だいたいのレストランやカフェは賄いがついている。店のメニューから選べる店もあればその日の食材次第で違うものを作ってくれる店もある。
そしてジャパレスで働けば、日本食にありつける確率が格段に上がるのである。


私が出会った留学・ワーホリでNZに来た人たちの中では、総合的にはNZの方が日本より好きな人、やはり日本のほうがいいという人、だいたい半々くらいだった。しかしどちらの人も必ず言うのだ、「でもやっぱご飯の美味しさは日本が一番」と。(これはNZの食のレベルが低いとかではなく、慣れも大いにあるとは思うが)
数ヶ月で帰るならともかく、長期間海外に留まるのであれば日本食が恋しくなるのは必然。日本食品を扱った食品店や日本食屋もあるけれど、毎日買えるほど安くはない。それがジャパレスで働けば、少なくとも一日一食はお米料理が食べられるのである。

100%英語環境で働く人はすごい。その向上心があれば英語力は間違いなく伸びる。いい経験もできる。
満足のいく食事を自炊できる人はすごい。そのスキルがあればどこでも生きていける。節約もできる。
しかし「英語圏に到着したところで向上心は力尽きた、日本食が恋しい、しかし懐も寂しい」という私のような生活力も根性も財力もさほどない人間であっても、頑張りすぎなければワーホリは続けられる。
「ずっと英語環境はしんどい!」と思ったら日本人のいるシェアハウスを日本人用掲示板で探せばいいし、「日本食に定期的にありつきたい!」と思ったらジャパレスで働けばいいのだ。
そして精神に余裕を作った状態でyoutubeなどで英語表現を勉強して周りの外国人に話しかけ、機会を伺いながら「ここだ!」のタイミングでそのフレーズを繰り出してみればいい。
目標に向かって頑張れる人は素晴らしいけれども、頑張りすぎて壊れるよりは回り道を取ったほうがいい。
「これがだめだったらこうしよ」というプランB、Cを持っておくことは、ワーホリに限らずとても大事なことだと思う。これはロックダウン中に「これがだめだったら野宿やないかい」思考になりかけた私の、血の滲む学びである。


ちなみに私は現在、(恋人を除いて)ほぼ日本人しかいないフラットに住み、半数以上が日本人スタッフの日本食屋で働き、まかないで日本食を食べている。
もうほぼ日本やないかい。
留学エージェンシーの方々が見たら卒倒するレベルの「ド失敗ワーホリ例ど真ん中」であるが、全然頑張っていないからこそ、隙間時間に文法を確認したり、気分のいい時に英文を読んだりしながら、嫌にならずに2年近く英語学習が続けられている(進行速度は亀レベルだが)。
私にとっては英語学習が「効率的」より「嫌にならない」ことが大事だったのだ。これも人によると思うので、自分なりの道を探せばいいと思う。


さて、そんな感じでNZにいるにも関わらず日本人に囲まれてぬくぬくと幸せに暮らしていた私であったが、2021年8月末からデルタ株が国内に現れまさかの再ロックダウンとなり、まあ1ヶ月程度で終わるっしょ!とタカを括っていたら最終的に11月までロックダウンが続き、28歳にして人生最長の長期休暇を手に入れてしまった。

再度のロックダウンに備えて予めRing Fitを買っていた私はしばし無敵スターを取ったマリオ気分でいたが、
3週間を超えたあたりで体がチカチカしだして、1ヶ月後には普通の赤い配管工おじさんに戻ってベッドの上で大の字になり虚無顔で寝転ぶこととなった。人は暇を与えられすぎると一周回って眠れなくなるのだと、一年ぶりに思い出した。就労中の休日なんて一生寝られるような気がするのにな。

 

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仕事にも行けず友人にも会えず遠出もできず、気が滅入ることもなくはなかったが、少なくとも仕事に行けない間は政府から補助金が下りるし、今回は幸運にもその網の中に入っている。所持金を見つめながら青い顔で政府会見の中継を見つめていた昨年より状況ははるかにマシだ。プランBやプランCを用意しておくことは大事だが、どのプランが壊れても「まあなんとかなるか」と思える程度のお金があることもとても大事である。


youtubeでエクササイズや英語学習、スマブラの特訓(ちなみにマリオは使ったことがない)など、どうせだったらロックダウン前より己をアップグレードしたる、の気持ちで鍛錬(?)に勤しんでいた11月末、ロックダウンが緩和されることとなり、12月からワクチン摂取証明を見せればレストランでの飲食が可能になることが発表され、ようやく私は職場に戻った。
そして戻った初日にいきなり10時間勤務をした結果普通に体調を崩し、時期が時期だけにコロナを疑って検査まで受け、結果が出るまで結局そこから1週間休んだ。最終的にただの風邪だったのだが、我ながら本当に耐久性がカスである。3ヶ月休んだ末に1日出勤して体調崩して1週間休みって、100均の靴下より耐久性が低いんじゃないか。

散々迷惑をかけて復帰したあとも数日間は数時間の出勤で足がパンパンになり、メディキュットが手放せなかった。
最近はようやく足が慣れてきてメディキュット離れしてきていたところで、ここにきてオミクロン株の登場である。本日シティ内での市中感染も確認されたので、なんとなく既にうっすら嫌な予感はしている。何をとは言わないが、不意に時間ができた時用に再びリングフィット用コントローラーを部屋の隅に設置し、当分は使用頻度が低いことを祈っている。

これはNZ生活を後々振り返れるように書きはじめたブログで、本日の更新を持って時制が現在に追い付いてしまった。おそらく本日が年内最後の更新になると思うのだが、来年からもNZ生活をポツポツと垂れ流していこうと思う。

見ていただける方は引き続き、どうぞよろしくお願いします。

 

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ビザが延びた女が再びビザに翻弄される話

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ファーム移動しようとしたり失敗したり出戻ったりと短期間でバタバタし、一周回って穏やかな心で黙々とブルーベリーを摘んでいるうちに5月が終わり、6月頭にシーズンは終了した。
いやブルーベリーのシーズンなっが。
5月頭って聞いてたけどなんだかんだ1ヶ月延命したな。
そしてNZ国内の早い地域では9月ごろからまた次のブルーベリーの収穫が始まるらしい。
シーズンオフ3ヶ月しかないのかよ。新連載が途切れない売れっ子漫画家か。


そして仕事がなくなると、また頭をもたげだすのがビザ問題である。
ビザが切れるのは6月末だが、6月に入っても情報は来ない。うん知ってた。
現在SSEビザで働いているほぼ全員がおそらく前回「今かよ‼︎」と叫んだはずなのだ。そして今の我々のビザは6月末に一斉に切れる。このまま何もせずにボーッとしていると、無職&ビザ喪失からの国外追放コンボが決まってしまうのである。

5月末からファームの宿内では「次どこ行く?」と「ビザどうなるかな」という会話がちらほら出てはいたのだが、6月に入るともはや「ビザどうしようね」の会話はほぼ挨拶のように交わされていた。
未だNZは国境をほとんど封鎖しており、国外からの人手は引き続き期待できない。しかし6月以降はNZ的には秋で、夏ほど収穫は忙しくない。よってそこまで労働力がいらない可能性がある。
ファーム仕事はもともと移民に頼っていたから緊急でSSEを発行したものの、ファーム仕事で人手がいらなくなった場合、政府が自国民の就職率を削ってまで移民に職を提供する可能性は低い。
はたしてビザは延びるのか延びないのか?
そして延びるとしたらそれをいつ言ってくれるのか?
1週間ごとに「来週情報が出るらしい」という噂が出ては消えていく。富岡さんには叱り飛ばされそうだが、我らガッツリ生殺与奪の権を他人に握られているのである。正確にはビザ与奪の権だが。
どのみち精神衛生上、非常によろしくない状況であるのは間違いなかった。


そしてこの間私が何をしていたかというと、精神を落ち着かせるためという名目でSwitchゲームソフトを買いあさっていた。
そう、これは必要経費だから仕方ないのだ。
ファームで農作物収穫ゲームをやる日が来るとはな…と言いながら牧場物語をプレイし、ファームで採集クエストをやる日が来るとはな…と言いながらモンハンをプレイし、友人にプレイ感想を語りながらファーム勤務をしているうちに、皆ポツポツとSwitchを買い始め、周囲には着々とゲーマーが増え、実に高校生時代ぶりに「このあと一狩りいこうぜ」と言い合う日々が続いた。
こんだけSwitch買う人を増やしたんだから、任天堂は私にゲーム一本無料券くらいくれてもいいと思う。
ビザ情報を求めてメールBOXを更新しつつ、画面の中でトウモロコシを収穫しながらそんなことを思った。

いや実際全然ゲーム内でトウモロコシ収穫に精を出している場合ではないのだが、追い詰められているのに何もしようがないのでもはや気を紛らわせるくらいしかないのである。ブルーベリーシーズンが終わり次はリンゴファームへと出向く人もいたが、ビザ情報が出たらすぐに動きたかった我々としては今更新しい職を探すのも気が進まなかった。そもそも1ヶ月以内にビザが切れる人間を即座に雇ってくれるところはおそらくきっとまたブラックである。同じ轍は踏まない。


周りでは飛行機の手配を進める人もいたが、私と恋人はお互いの母国の状況があまりよろしくないことから、ビザが延長されなくてもNZに留まるつもりでいた。理想は今のビザがそのまま無料で延長されることだったが、6月2週目に入ったあたりで、いつ出るのかわからない情報を待つより他のビザの可能性を検討した方がいいかもしれないという話になってきた。
学費はかかるが週20時間の労働が許される学生ビザを申請するか、貯金を切り崩しつつ自由に時間が使える観光ビザで留まるか。
しかしどちらにせよ田舎にいるよりはシティに戻った方がどちらにせよ便利だろうと、日本人コミュニティで家を探し、気に入った家をビデオ通話で内観させてもらい、ひとまずシティに住む場所だけは確保し、シティへの引越しをいよいよ決めたその数日後。

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NZ政府からの公式発表により、ビザが再度延長となった。


ちょうどその発表が出る数分前、知人に学生ビザに関する相談のLINEをしていたのだが、シャワーに行って帰って来たらその知人から大量の着信があり、何事⁈と慌てて掛け直したら「ビザ延びたねー‼︎」と言われて私は延長を知った。なんなら髪からはまだ水が滴っていた。
しまった完全に油断した。もういつ発表が来ても驚かんと思っていたのに。人がシャワーを浴びた隙を狙ってくるとは。

今回のビザ延長は現在SSEビザで働いている人が対象で、期間は6ヶ月。
しかし7月からは季節労働のみという縛りが撤廃され、
レストランや清掃など、ワーホリビザと同じ仕事につくことができるようになるという、我々が「あんなこといいな 延びたらいいな」と思い描いていた、まさに希望通りのビザであった。
シャワーから帰って来たら人生の見通し急に明るくなっとるやないかい‼︎
桃鉄でいうところの、ボンビー神から解放された矢先にエンジェルカードを引き当て、天使がふわふわ舞いながら毎ターン2億持って来てくれる状態である。
電話を切ってから急いで恋人にもビザ延長のニュースを報告しにいったら、
「え?フェイクニュースじゃなくて?100%は信じない方がいいよ」
と真顔で諭された。情報化社会に生きる人間としては正しいスタンスである。


かくいう私も「365日営業中!」と書いた店の臨時休業日には度々ブチ当たるのに、宝くじは300円以上当たったことがないタイプの人間なのである。突然のハッピーニュースほど怖いものはない。
にわかに信じがたすぎて、政府がメールで正式に私のアドレスにビザ延長の通知を送ってくる数日後まで、パソコン上の学生ビザ申請フォームタブを閉じられなかった。フェイクニュースじゃなくて本当によかった。


そして不安から解放された脳と耳元にささやく悪魔。
「学生ビザに消えるはずだったお金浮いたし、いま多少浪費しても予算上は実質タダじゃね?」
「7月からはシティで仕事探して働くんだし、今は思いっきりゲームしてても許されるんじゃね?」
ついこの前まで不安を紛らわせるという名目で思いっきりゲームしてた奴、どこの誰だ。
しかしそれはそれ、今は今である。我々はあっさり悪魔に負け、二人揃って笑顔でゲームショップに向かったのであった。