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ニュージーランドでの日々を書いています。

引きこもり色白女が絶景アイランドに旅行した話

バタついている間にだいぶ間が空いてしまった。
5月〜7月の間にクック諸島への旅行・NZへの帰国・日本への帰国・沖縄への旅行と色々あり、最終的に8月現在アルゼンチンにてこのブログを更新しているのだが、順に1つずつ書いていきたい。


さて、NZがかなり肌寒くなった5月下旬のことである。
NZから帰る前にどこか少しくらい旅行をしたいね、ということで、友人と話し合ってクック諸島に行くことにした。
NZから飛行機で4時間弱ほどで、とにかく海が綺麗、かつ年中ベストシーズンとも言われるほど温暖な島だそうで、以前ガイドブックか何かで見かけて以来ずっとひっそり行きたいと思っていた場所である。
コロナ禍になってからはファームやらシティやら往復に精一杯で旅行どころではなかったので、ワーホリ3年目にして最初で最後の本格的な旅行となった。
今回はまず、その話を書いていきたい。


当初は3泊4日、火曜の朝9時出発で昼の15時前に到着し、金曜の夜に帰国する予定でいた。
あまりお金が無いながらも精一杯現地を満喫するための朝出発&夜帰国プランである。
職場のマネージャーには火曜〜金曜日の4日間の休みを伝えて了解を得ていたのだが、
その後オーナーに何気なく旅行のことを伝えたところ、

クック諸島いいね〜!私たちが行った時は時差のこと考えてなくて危うく初日宿無しになるとこだったの、気をつけてね!」

と言われて(エ…?JISA…?)と真顔になりつつそっとチケットを確認してみたところ、なるほど我々は火曜の朝9時に出発し、月曜の15時前に着くことになっていた。まさかの時差22時間である。
ちょうど両国の間に日付変更線がある為こんな事態になっているのだが、日本とNZ間は13時間のフライトで時差3時間なのを無意識に基準にしていたので、フライト時間が4時間弱で時差が22時間あるなど考えてもみなかったし、よもや到着日が違うことに気づきもしなかったわけだが、まあフライト時間だけを見ていたにしても朝9時発→15時前着だと5時間半以上飛行機に乗っていることになるはずなので、シンプルに洞察力と算数力の欠如でしかない。
コロナ出現後初の海外旅行ということで、提出書類や陰性証明書の有無などは友人と再三確認しあっていたのだが、時差というコロナ禍以前からもあった当然の概念をすっかり忘れ去っていた。敵はウイルスより先に己のアホさ加減であった。

 

そしてこの時差は当然帰りも適応される。チケットに書かれている曜日は現地出発時の曜日であって、つまり金曜の夕方にクック諸島を出たらニュージーランドに到着するのは土曜日の夜中。つまり当初の予定であった「火曜朝に出発〜金曜夜に帰国の3泊4日ツアー」は「火曜朝に出発して月曜昼に到着〜金曜夕方に現地発で土曜夜着の4泊6日ツアー」という、字面だけ見たら矛盾だらけのプランに変更となったのだ。宿泊日が増えてしまったので現地でのホテル宿泊も予定より増えるし、金曜帰国予定も実際は土曜日だったため職場にもう1日休みを申請せねばならない。既に出発前からバタバタである。大丈夫なのか序盤からこんな感じで。

 

出発当日、早朝から飛行機に乗り込んでいざ出発である。クック諸島はハワイのようにいくつかの小島が連なる島々の総称で、国際空港はその中のラロトンガ島にしかない。またNZとクック諸島間はコロナ陰性結果証明書等は必要なく(2022年5月下旬時点)、島に入るにあたっては事前にスマートフォンから情報を登録しておけば追加書類は必要ない。
…とはいえ機内で渡される「携帯品・別送品申告書(黄色っぽくて細長いアレだ)」は変わらず記入が必要である。私は機内で受け取って流れるように座席シートポケットに差し込み約2分後に爆睡しはじめ、そのまま機内に置き忘れた。結果、屈強そうな係員に横に連れて行かれて新しく書かされた。完全に出来の悪い生徒の居残り勉強の図である。ちなみに出来の悪い生徒すぎてペンの一本も持っておらず、その場で屈強そうな係員に借りた。やさしい。そして本当にすいません。
さっきから私が躓いているのはずっと、コロナが広がる前から海外旅行には必ずあるものだけである。本当に大丈夫なのか序盤からこんな感じで。

初日はラロトンガ島の空港近くの格安ロッジに泊まることになっていたので、とりあえずそこに行ってまず荷物を置く。早朝出発のおかげでまだまだ時間はたっぷりある。天気もいいしいざ散歩に参らん!とワックワクで行き先を調べようとした我々は、手持ちのスマホで検索しようとしてふと気がついた。


Wi-Fiが入らねぇ。

繰り返すが、飛行機で4時間以内に着くとはいえここは海外である。通貨はそのままNZドルが使えるし使用言語もNZと同じ英語だがここは海外である。通貨が共通でも、国が違えばSIMカードは異なる。かつ島にスタバやマックのようなフリーWi-Fiを提供している場所があるかは未知数である。こちとらスマホの使いすぎでストレートネックや肩こりに悩み始め、その対策動画を背中を丸めてyoutubeで眺めつつなるほど〜と言いながらまさにその瞬間ストレートネックを悪化させているような人間なのだ。フリーWi-Fiがなければ新しく情報を調べることもできないし、事前にブックマークしていた情報ページすら見られない。かつ安さと空港からの近さだけで選んだような宿のため、受付もなければマップもなく、疑問を聞けるスタッフもいない。さっきまで輝いていたワクワクフェイス×2は一転してアセアセフェイス×2になった。令和4年にこんなに丸腰なことってあるんだ。


未知のエリアで情報ゼロの丸腰スタートかつマップなしとなった我々は、とりあえずマップ開拓をすべく日焼け止めだけ塗って外に出た。空港では1時間フリーWi-Fiが使えたので、いったん空港まですごすご戻り情報を調べる。
島唯一の回線であるボーダフォンのショップが島の中心にあるようだったので、とりあえずそこまで行ってSIMカードでももらってくるかと思い、目の前のホテルの受付で聞くとここから歩いて15分くらいだとのこと。手書きの地図を渡してくれたので、それを頼りに道を進む。分かれ道は数えるほどしかないので、迷うことは基本的にないはずである。

途中、5匹くらい犬に会った。野犬なのか飼い犬なのかよくわからない犬がそれぞれ縄張りを守っているが、どの犬も大変フレンドリーで、吠えたり暴れたりはしない。ゆっくり尻尾を振ってこちらを見つめ、特に反応がなければ少し距離を取りつつ縄張りを出るまで一緒に歩き、好意的な反応があれば撫でてもらいに近寄ってくる、という感じである。最初は海外の野犬ということもあり少し怖かったが、無理には近寄ってこないことが分かりすぐに慣れた。島の人も犬が来たからといって近寄ることもなければ邪険にもしない。人間と犬、一緒に暮らすのが当たり前、という感じである。島の暮らしっぽい。(大味な感想)

そして犬に癒されながらボーダフォンショップに着いた頃には、なぜか40分以上が経過していた。
いやじゃあ15分は嘘すぎるだろ。
でも島の人々は恐らく車生活が当たり前なので、リゾート地まで来て車もWi-Fiもない状態で全てを徒歩で済まそうとする観光客への案内はあまり慣れていないのかもしれない。これもまた我々が悪いのかもしれない。海外で運転できる自信がない者はそのくらいの不便や不運は享受すべきなのかもしれない。
そしてやっとこさ辿り着いたショップは到着時点で閉店時間を5分ほど過ぎており、店は普通に閉店していた。嗚呼我が人生、である。
しょんぼりしながらまた同じ道のりを40分かけて帰宅し、宿泊場所の目の前にある別のホテルで夕食を取った。明日からのホテルにはWi-Fiがあることを切に願った。


翌日チェックアウトを終えた後、またもやWi-Fiをもらいに我々は空港に向かった。もはやWi-Fi乞食である。
島には時計回りのバスが13:00、14:00、15:00…と1時間ごとに、反時計回りのバスが13:30、14:30、15:30…とこちらも1時間ごとにそれぞれ走っているとのこと。どちらも空港を起点に一周するので結局同じバス停を巡ることになる。行きたい場所が島の右側か左側かでどちらのバスに乗るか決めればいいわけだが、賃金は一律なので初回は反対側のバスに乗ってあえて遠回りをしながら窓の外を眺めるのも観光がてら良いかもね、という話になり、我々はバスに乗ってぐるりと島を一周しながらホテルに向かった。

次のホテルはとても良いところだった。宿泊者専用のプールはあるし、朝食もついているし、部屋は綺麗でおまけにかわいい猫もいる。課金制だがWi-Fiもあるし、そして受付に人がいる。念願のシチュエーションに我々は涙を流し、そして実感した。ホテル代はやはりケチるものではない。

部屋に入って荷物を置き、ホテルの施設にしばしキャッキャとはしゃいだあと、島のマーケットについて受付に聞きに行った。なんでもラロトンガ島の有名なビーチであるムリビーチで週何回かナイトマーケットが、そのほかの場所でも朝のマーケットが行われているらしい。島の市場とか素敵なものがありそうじゃな〜いキャッキャ!と到着そのままのテンションで聞きに行った我々は、朝に弱い己を鑑みて朝のマーケットは早々に諦め、その日の夜行われるらしいナイトマーケットに行くことにした。

ナイトマーケットは20時過ぎくらいまで行われていて、我々は確か19時半くらいに行ったのだが、すでにやや終了の気配が漂っていた。とはいえまだ数店舗はやっていたし、私たちのお腹を満たすには十分である。日頃ガーリック嫌いの恋人に配慮して食べられないガーリックシュリンプを心ゆくまで満喫し、私は大満足であった。
帰りのバスを失うまでは。

我々はその日、「バスは2ルートある」とその日の午前中に学習していた。そしてホテルまで最短で行けるルートAのほうのバスをバス停で待っていた。ルートBのバスが1回来たが、「あれ〜違うねぇ」と言いながら流していた。その後不安そうな友人に「もしや夜になるとダイヤが変わるのでは?」と言われ、近くのショップの人にも一応バスがまだあるかどうか聞きに行くと、「バスはよく遅れるからね〜」と言われた。それは島の一般論であり絶妙に答えになっていない気もしたが、そのまますごすご引き返す。

そうこうしているうちに1時間経ち、ナイトマーケットの店も全員撤収を始めた。1時間半近く経ち、「もう次来たらルートAだろうがBだろうが乗ろう」と話していたのだがどちらも来ない。事前に得ていた情報では終バスの時間ではまだないはずだが、相変わらずホテルの外ではWi-Fi難民なので検索もできず確信も揺らいでいく。1時間半もしたら普通はAもBも2本ずつ来ているはずなのだ。ただ暗闇に突っ立っているだけの人間2体を心配してか犬が何匹か近くに来たが、もはやそれすらちょっと恐怖である。せっかく良いホテルになったと思ったらまさかの…このまま…犬と雑魚寝…⁈
お腹も膨れており外は快適な気温だったので危機感がだいぶ薄くはあったが、周囲に人気はなくなりバスも来ずインターネットも使えず暗がりに平和ボケした日本人2人+野良犬2匹、とは文字で並べるとまあまあヤバい状況ではある。ただし星は綺麗だった。

犬と一緒に悲しみの遠吠えでもしてやろうかと思い出した頃、ナイトマーケットで最後まで残っていたピザ屋のおじいちゃんがついにマーケット会場の照明を消した。あっ遂に誰もいなくなるのね…と思ったら、そのままおじいちゃんが近づいてきて、我々を車にのせてホテルまで送り届けてくれた。突如神降臨である。しかも我々は両方ピザを買っていないのに。数時間前の自分を叱りとばしたい。なにをガーリックシュリンプを食べているのか。そこはピザだろうが!
ちなみにこの島の治安の良さと、相手がおじいちゃんでありこちらが2人であること、そしてこの状況から今回は車に乗ったのだが、普通海外で(というか日本でも)知らない人の車に乗ってはいけない。良い子は真似しないように。というかそもそも良い子は見知らぬ土地でWi-Fiもない状況で呑気に1時間半もバスを待たないように。

そして途中、一台バスとすれ違った。ルートBのバスである。
今?!
この渋滞もなにもない島でアンタどこに遅れる要素があるのよォ!と思ったがまあ仕方がない。とにかくルートBは普通に遅れていただけだった。


おじいちゃんに土下座の勢いでお礼を言って、半ば無理やり心ばかりのお金を渡してホテルに無事到着した。そのあと調べたところによると、バスのダイヤは変わっていなかったものの2本あったバスのルートが夕方からは1本になっていた。
つまり我々が探していたルートAのバスはその時間、もう無かったのである。我々は存在しないものを野犬と共に待っていたのである。あそこで1本来たバスを見送ったことが致命的であったのだ。もうバス自体が1時間に1本しか来ないのだから。


色々と疲れ切って、その日はそのあと即座に寝た。良いホテルのベッドは我々の徒労を優しく包み込んでくれた。繰り返すが、ホテル代はやはりケチるものではない。
次からは、この旅行のメインとも言える「3日目・アイツタキ島」を含む後編をお送りする。