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ニュージーランドでの日々を書いています。

方向音痴が海外で迷子になる話

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ニュージーランドにやってきて2日目の朝(もはや昼)。
かなり遅い時間から1日をスタートさせてしまったが、
その日は翌日からの学校に備え、通学路を確認する予定だった。


ちなみにタイトルにもある通り、私は方向音痴だ。
「徒歩5分」の表示を見て「油断しないぞ」と15分前に出発し、なぜか徒歩30分かかって到着して結局遅刻する人間である。Google Mapを見て建物を指差し確認し、「よし!」と頷いて案内と真逆に歩き出す人間である。
更に『属性:方向音痴』に『スキル:不運』までついているから、案内より大幅に遠回りしてたどり着いたお店が臨時休業で閉まっているパターンもよくあって、漫画ばりに店の前で地に膝をついて崩れ落ちることもよくある。


そんな私が異国の地でバスに乗り、知らん場所まで行って、またここまで帰ってこなくてはならないのである。一大事だ。
…いややっていることとしては幼稚園児の「はじめてのおつかい」とさほど変わらないのだが、5歳児にとってのスーパーとアラサー児(しかも方向音痴)にとっての海外のシティは
同じくらいの未知なのである。
出発前から嫌な予感しかしなかったが、登校初日に行方不明になるよりはまだマシだ。
ご婦人から学校への行き方を書いた手書きのメモを貰い、いざ出発である。


最初のバスには無事乗れたのだが、乗り換えのバスターミナルで大量のバスに思考停止した私はどうやら早速2本目のバスを間違えた。

いや展開早。

ナビの案内から徐々に逸れて行くバスとスマホを交互に見ながらアワアワしていたら、親切な運転手さんが目的地を聞いてくれて、そのバスのルート内で一番私の目的地に近い所で降ろしてくれた。
NZのバスでの支払いはICカードが一般的なのだが、それすら知らなかった私がまたもモタモタ手間取っていると
「今回はお金はいいよ、無事着けるといいね」
と笑顔で送り出してくれた。
うそやん。神様はバスにいた。
今後いかなる場面でも、全てのバスの遅延を許して生きていこうと誓った。

 


そこからGoogle mapを駆使してなんとか学校には辿り着いたが、問題なのはそこからだった。
完全に神(運転手様)の善意によりここまで辿り着いてしまったため、結局正規ルートも分からなければ帰りのバス停すらわからない。
坂道をウロウロして日頃ゲームばかりの我が身はボロボロだし、Google mapを駆使しつづけた結果スマホの電池は切れている。

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初見のエリアでHP赤ゲージ、武器無し、どうぐ無し、迷子である。
はじめてのおつかいにしてもだいぶ分が悪い。
困り果てたアラサー児は、街のチケット売り場で暇そうにしていた店員さんに半泣きで
「わたしは今どこにいるんでしょうか」
という末期的な質問をした。

残念な顔と残念な質問から私の絶望をちゃんと察してくれたお兄さんは、店の奥からわざわざ地図をプリントしてきてバス停の場所を教えてくれた。
うそやん。神様はチケット売り場にもいた。
今後いかに暇そうにしている店員さんにも、敬意を忘れず生きていこうと思った。

 

到着2日目にしてNZの人々の印象はすでに最高である。
人という字は人と人との支え合いでできているんだよ、と心の中で金八先生が囁き、私は深く頷いた。金八先生、一回も観たことないけど。


そのあとさらにもう一回帰りのバスを間違い(どうして)、ボロボロになりながらホームステイ先に帰宅したら、窓に張り付いて私の帰宅を待っていたらしい4歳児が走り出て来て
「長かったね!迷子になったんでしょ!
と指をさしてきた。
その通り過ぎて何も言えず、曖昧に微笑んでかわした。

 

まだ学校が始まってすらいないのに、英語以前の所で既に疲労困憊である。
英語ができない奴が海外で暮らすことよりも、方向音痴が慣れない土地で暮らすほうが問題なのかもしれない。
そしてより問題なのは、英語力は頑張れば伸びるが、方向音痴はそう簡単に改善されないという点である。

思わぬ方向からぼんやり暗雲が立ちこめてきたのを感じたが、ひとまず見なかったことにして、その日もよく眠った。