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ニュージーランドでの日々を書いています。

新生活と真夏のクリスマスの話

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新居で暮らし始めてしばらくして、元クラスメイトと恋人になった。
その1週間後、掲示板で見つけたお店での勤務が決まった。
卒業後、LoveとJobを同時ゲットである。(やかましい)
新しい家、新しい恋人、新しい職場。
我が人生にしてはなんだかめずらしくキラキラな気配がするではないか。
極めつきには家に子猫。しかも5匹。イッツパーフェクトライフではないか。


新しく働き始めた職場はショッピングモール内の弁当屋のようなところで、チキンを切ったり米を炊いたり表の料理を補充したりといった、『キッチンハンド』というシェフの手伝い係のような仕事をしていた。
接客スタッフは全員日本人や韓国人の女性だったが、シェフは全員インド人という少々謎なメンバー構成の店だった。

接客スタッフの女性陣は皆優しかったけれど、キッチンのインド人男性たちは自分の仕事が終われば私に大量の洗い物を投げて調理台に座りNetflixを観始めるという状況で、
(これは…カルチャーの違い?それとも彼等の人間性の問題?)
と内心首を捻りながらひたすら真顔で鍋にこびりついたスパイスを洗った。
なんだか日本で見てきたあらゆる「不真面目な同僚」がまともに見えてくる。
私が見ていた世界は狭かったのだ…と自分に言い聞かせつつ、Netflix鑑賞に勤しむ背中におたまでも投げてやりたい衝動を抑えた。
今思えばかなり特殊な環境だった気がするが、私にとってはここの店が初めてのNZでの”職場”だったので「海外の店ってこんな感じでやってんのかあ」程度に思っていた。

最初はそれでも日本人マネージャーの指導の元に仕事はきちんと回っていたのだが、帰国する彼女の代わりにインド人マネージャーが襲来した辺りから風向きが変わり、私の不在の日に接客スタッフが全員ブチ切れて翌日ストライキを起こしたり、私の休憩時間15分の間に接客スタッフがシェフと喧嘩し一気に3人辞めたりした。
いや私の不在の間に毎回何か起こりすぎだろ。日々なかなかの急展開である。


日々ストレスやカルチャーショックを感じつつ私が働き続けていられたのは、決して私が我慢強かったからではない。
仕事後に一直線で家に帰り床に転がりスマホを構え、転がる猫ちゃんたちを愛でる日々を満喫していたからである。
ワーホリに来て一ヶ月半、写真フォルダの中身は全部猫になった。
いやNZの写真を撮れよと友人全員にツッコまれた。もっともである。
だが子猫を前にしたら人類みなIQが3になる。これは不可抗力なのである。


日々インド人と戦ったり子猫ズに癒されたりしているうちに、一ヶ月はあっという間に過ぎた。
ニュージーランドは日本と季節が反対なので、2019年の12月は私の人生初・真夏のクリスマスとなった。
長袖長ズボン三角帽というサンタクロースのビジュアルはここでも共通らしく、皆が半袖で行き交う街角で踊るサンタのディスプレイは日本人から見るとかなり不思議な光景だった。
そして皆一応飾りつけはする割に装飾が雑なので、梯子に登るサンタの梯子部分がサンタの首に絡まりなにやら事件性のある装飾になっていたり、目が虚ろなサンタが店頭のウィンドウにただ横たわっていたりして、総じてまあまあ怖かった。これを店に飾ることで一体どんな客層の来客を促しているのだろうか。


クリスマス当日は(私としては)頑張ってロールキャベツを作り、恋人の家に行って「お口に合うかしら」的なことをのたまってみたのだが、相手の偏食度合いと警戒心の強さが私の想定を超えており、冷静な顔で「あっ僕は大丈夫」と一口も食べないまま返されてブチ切れるなど、ささいな事件があったりはしたが、概ね日々は順調だった。

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…概ね日々は順調だった。



そして大晦日
晦日には年越しの瞬間にシティで花火が上がるため、恋人と夜に出かけ、大勢の人と上空を眺めながらじっと花火を待った。

全員でカウントダウンをしながらライトアップされたタワーを見つめ、
空高く上がった花火に歓声をあげて、
来年日本に帰ったらどうしようかなぁなどと、
呑気に未来に思いを馳せていた。

その時は2020年が大変なことになるなんて、きっとあの中の誰も予想していなかった。